学部長からのメッセージ

同志社大学文学部は、1875年に創立された同志社英学校に起源をもつ学部で、英文学科、哲学科、美学芸術学科、文化史学科、国文学科という5つの学科で構成されています。それぞれの学科は独自のカリキュラムを通して、専門性を核としながら、さまざまな知識や考え方を学ぶことができるような教育課程を編成しています。また、副専攻制度を活用して、他学科の学問を学んだり、学科を横断して学際的な学びを経験したりすることで、各学科の垣根を越えた幅広い視野や知識を身につけるとともに、主専攻の専門的な学びをさらに深めていくこともできます。
文学部は英語で “Faculty of Letters” と言います。 “Letters” とはラテン語の “littera” を語源として「文字」や「書かれたもの」を意味します。つまり文学部とは、文字(あるいは表象)によって表されたもの、言い換えれば、〈言〉を学問する学部だと言えるでしょう。〈言〉の学問として、まず語学力を陶冶することはとても大切です。また、言語の構造を探究するという方法もあるでしょう。もちろん、詩、小説、戯曲といったいわゆる文学作品は〈言〉による知の宝庫です。さらに、歴史、思想、芸術、文化といった、有史以来、受け継がれてきた〈言〉の遺産を紐解くことは、先人たちとの対話を通して、今の私たちが「どこから来たのか」、そして「どこへ行こうとしているのか」という問いへの答えを導いてくれます。
21世紀の世界は、各地で紛争や戦争が絶えず、貧困や差別で多くの人が苦しみ、加速化する経済活動によって地球環境が危機に瀕するなど、混迷を深めています。SNSをはじめとするソーシャルメディアの普及は、コミュニケーションをより迅速なものとする一方で分断を生み出し、また、生成AIにみられる人工知能の技術革新によって、言語的主体としての人間のあり方そのものに疑問が投げかけられています。ますます複雑化する現代社会において、その問題の本質を正しく見極め、未来に向けた価値ある判断をするために、確かな〈言〉の力がこれほど求められている時代はないでしょう。文学部は、私たち人間を、人間たらしめている〈言〉とは何なのかを考える学部です。文学部の学びを通して、皆さんが21世紀の混迷の時代を創造性豊かに健やかに生き抜く、揺るぎのない〈言〉の力を身につけてくださることを心から願っています。
文学部長 金津 和美